育ってきた環境が違うから、セロリが好きだったりいぶりがっこがダメだったり、するのですね。すなわち発達障害を遺伝子のことにするのは簡単でわかりやすいのですが、そのとき「環境」は要因とならないのか、という問題があります。しかしセロリの好き嫌いは、セロリに関する実経験の違いによるでしょう。それと同じように、脳の実経験???なんだかわかりませんが、環境により脳の構造が変わるものでしょうか。変わるのだとすれば、どういうメカニズムがあるでしょう。
ということで読んだ本が、
遺伝子の実体はDNAで、それはかの有名な二重らせんの形をしている。しかし、細胞内の遺伝子は、二重らせんのままむき出しになっているわけではなく、通常はその周りに、多様な有機分子の結合体が付着している。それらの分子を侮ることはできない。なにしろ、付着している遺伝子を活発にしたり、不活発にしたりするのである。さらに重要なのは、それらの分子が長期間、時には生涯を通じてずっと、同じ遺伝子に付着し続けるということだ。「エピジェネティクス」とは、長期間にわたって遺伝子を調節するこれらの分子が、どのように遺伝子とくっついたり離れたりするのかを研究する学問分野である。エピジェネティックな付着や分離は、ランダムに起きることが多い。しかし、食べ物や環境汚染、ひいては社会との相互作用によって、そうした変化が引き起こされることもある。エピジェネティックな変化は、環境と遺伝子が作用しあう領域で起きているのだ。ということでありまして、つまりまとめますと、受精によってある個体の遺伝子の塩基配列はその瞬間に決定となりますけれども、そのあとで特定のはたらきをする塩基のオンオフスイッチがいじられることで、発現に影響がでると、そういったことになります。たとえば、母親の胎内というのも、遺伝子の配列は決まった後ですが、そのとき母親の栄養状態によって、胎児の栄養状態が決まった結果として、こんなことが起こるというのです。
母親の胎内でオランダ飢餓を経験した人は、統合失調症にかかるリスクが著しく高いことを発見した。また、うつ病のような情緒障害も増加するという証拠があった。男性には、反社会性人格障害の増加が認められた。ましてや男と女だから、というのはメロドラマのような、あるいは社会的なジェンダー論ではなくて、男と女ではまさしく遺伝子がちがうという、そこに端を発して、違いが生じているのです。田中の自閉症については、妊婦が葉酸を大量に摂取した際の胎児、という推測もこの本には出てきます。ともかくそのように「環境によって遺伝子がエピジェネティックに変化」すると「その変化が次世代に継承される場合」もあるというのです。ここまでみたときにはじめて、全てを遺伝子のせいにする単純な主張に対する批判、に対する反論の準備が整いました。
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