少し前の記事の続きの内容なので、きょうはまずはリマインドから。認知症や統合失調症、高次脳機能障害、そして幼児の発達と発達障害のアセスメントに使われるのが「知能検査」。田中も発達障害者であるので、知能検査を受けて認定されているのであり、発達障害者はみんな自分のIQ(知能指数)を知っているんだよ、という話を以前にやった。いま発達障害者として生きているみなさんの多くが受けた知能検査はおそらく、ウェクスラー知能検査の第3版、通称「WAIS-Ⅲ」(ウエイススリー)である。
この検査を受けた人はみんな、自分のIQを、まずは「全検査IQ(FIQ)」として認識し、それが「言語性IQ(VIQ)」と「動作性IQ(PIQ)」の二つの下位数値に大別されて、というかたちで、3つのIQ値を知っているものであった。ちなみに田中の全検査IQは95となっており、IQは100を中心としたものですから、まあそういうことである。そこで田中の言語性IQは106、動作性IQは82となっており、簡単にいってしまえば、動作が言語の足を引っ張っている、ということになる。と、この理解はたぶん正しいし、わかりやすい。実感に即している。田中はいま動作性の仕事から言語性の仕事へ転職しようとしている。
ところが、いま現場にどの程度普及しているのかは田中にはわからないが、現在のWAISの最新版は第4版(2008)である、と田中は放送大学で習った。この第4版における最大の改正が、言語性IQと動作性IQという考え方そのものをやめたことである。こんなわかりやすいと思っていたものが、どうして撤廃されたのか。その詳しいところは教科書に書いていないので、こんど先生に聞いてみますね、という話を以前に弊ブログでやっている。その答えが先生からメールで届いた。とはいえ、これを読んで勉強してください、というかたちで、なので、きょうはそれを読んでみましょう、ということになる。
先生に教えてもらった資料は2つあるのだが、そのうちわかりやすいのはココに紹介する論文だ。
大六 一志 (2009) 心理学の立場から~知能検査が測定するものは何か?~
認知神経科学 / 11 巻 (2009) 3+4 号 239-243.
この論文にはっきりと書いてある。「ウェクスラー知能検査の代名詞であった言語性IQ、動作性IQは、直観に基づくものであり、知能因子理論的な根拠は乏しい」と。だからなくなったのだ。少し詳しく書けばこういうことだ。知能検査が測定する人間の知能とはそもそもなにかということを考えた時、知能を「言語」と「動作」の2因子に分割することは、直観的になんとなく正しい感じがしたのだが、でも本当にそれだけなのか。という研究、すなわち「知能因子理論」研究が進んできたのである。さまざまな学者が様々な説を唱えている(https://psychologist.x0.com/terms/152.html)。その流れの中でWAIS-Ⅳ(ウエイスフォー)は次の分類を選んだのであった。認知神経科学 / 11 巻 (2009) 3+4 号 239-243.
全IQ(FSIQ):総合的な能力
• 言語理解指標(VCI):言語理解、知識、概念化
• 知覚推理指標(PRI):視覚的な問題解決、情報処理能力
• ワーキングメモリー指標(WMI): 新たな情報を記憶、短期記憶に保持、処理する能力
• 処理速度指標(PSI):複数の情報を処理する能力
(http://www.ed.niigata-u.ac.jp/~nagasawa/WISC.pdf)
他の知覚因子理論を見ても、どうも「動作」という言葉が出てこなくなっている印象がある。考えてみれば「動作」は知能ではないのかもしれない。というか「動作」を生む知能因子があるだろうということだ。WAIS-Ⅲの動作性IQはWAIS-Ⅳの知覚推理指標と一定の相関がみられるという。たしかに田中の動作の問題は、視野が狭かったり向かってくるモノに鈍感だったりと、そういうふうに言い換えられる性質のものだ。
このさき、たとえば障害者手帳の更新などの際に、WAISをまた受けることはあるのだろうか。あるとすればその時、私たちはWAIS-Ⅳを受けることになる。本日のおはなしはここまでとなる。
0 件のコメント:
コメントを投稿