田中が到着したのは7時半頃だと思う。席は半分ほど埋まっており、しかしすぐに座れた。会計は前金制である。アルコールを注文したい人だけテーブルに店員を呼びその分が後会計になるが、さすがに酒を飲んでいる人はいないようだった。休日の午前中イオンモールのフードコートでは缶チューハイを飲む人を多く見かけるため、酒を注文する人がいてもおかしくないだろう。田中が店を出たのは10時少し前だった。この時にはとっくに満席となり入場待ちの列ができていた。
飯とみそしる、カレー、パン5種類、納豆、サラダ類、ポトフ、麻婆豆腐、スクランブルエッグ、肉団子、パスタ、漬物……ファミリーレストランのイメージで、しかもファミレスの中でも高級志向のココスをイメージして行くと、ちょっと残念な感じが否めない。パスタの味がひとつもしない。ポトフの汁にキャベツとウインナーと冷凍フライドポテトを突っ込んで煮てある。これはウチで料理するときの参考にはなるがレストランで食べるものではない。ホテルの朝食バイキングをたくさんやっている田中からすると、この朝食バイキングはかなり下位ランクと言わざるを得ない。
たとえばフライドポテトがそのまま出ていれば、何時間も居座る客が増えるということだろう。しかし田中は負けずに居座り続けた。朝食バイキングにはドリンクバーの代金が含まれてあるから。休日の朝、食事をしつつ本を読むにはなかなか快適な環境であることは間違いない。ファミリーレストランは机が広いし隣の席とも距離があるから勉強をするのに向いている。ふつうにファミレスに入って食事をするよりもだいぶ安く入れるし、時間に対して払ったお金だから席を使うことに引け目がない。フロアの人員削減のための朝食バイキングだろうから店員の目も少なく快適である。休日の朝、エンジンをかけたいときは利用したらよいだろう。
田中の目線の前の席の若いカップルが熱心にフィッシャーズのぺけたんの話をしており、田中の背後では高校生男子2人組がクラスメイトの女子がコバシリさんに似ていてかわいいという話で盛り上がっていた。田中が毎日、パソコンの窓を覗いて見ているyoutubeについて、誰かが話している声を街で聞くことが明らかに増えている。田中はふだん田中だけのyoutubeと思っているので、こういうことがあると幻聴かとおもうがどうやら事実であるらしかった。
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