2019年3月29日金曜日

PENTAXQ10×高尾山


スマホが壊れた旅先で「写ルンです」を使って以来、突如としてカメラを趣味にすることを決めた田中であった。田中の生涯で続いた趣味といったらこれまで読書だけで、そうすると頭の中が言葉で満杯になってしまう。なにかちがう趣味を作りたいと思っていたところだったので写真はちょうどよかった。

当初はフィルムカメラを手に入れる予定だったが、一月ほど前の横浜、年に一度のカメラの大規模展示会「CP+」に出かけてプロのカメラマンのトークショウを聞いていると、どうも写真の初心者はとにかくたくさん撮ってみるのがよいらしいことがわかりデジカメを買うことに決めた。フィルム代を気にせずいろいろ実験できるだろうと考えた。

最初はとにかくわけがわからないのだから安い中古品を購入し、とにかく撮ってみてから次を考えよう。CP+というイベントには中古カメラ市が出ていた。中古カメラ市で目の前にあるカメラをその場でアマゾン検索すると、もっともっと安く同じ機種が手に入ることがわかり、パシフィコ横浜からアマゾンで注文したのがPENTAXQ10である。

このカメラには幾種類かレンズを付け替えることができるのだが、そのレンズのうち基本的な「02」というレンズがついて12000円だった。現在検索してみてもこの値段では見つからないから、なかなかよい買い物であったはずだ。

しかしその旅先である横浜で田中は原因不明の精神衰弱を発症し、その復帰にはだいぶん時間を要した。その間、買ったカメラはそのまんま放り出されていた。そして本日、カメラはようやく始動。ほんとうは明日これをやる予定だったが、明日はどうも雨らしいのできょうに変更になった。カメラをはじめて使ってみる場所は、「高尾山」である。


田中は今年のはじめ東京都日野市南平に引っ越してきた。それを機に弊ブログが開始されたのだったが田中はそもそもが東京生まれだ。実家は23区方面だが、子供時代の田中はよくこちら多摩地区に連れられていた。いまの生活圏にある「多摩動物公園」、またすでに閉園してしまった遊園地「多摩テック」にはさんざん遊びに来ていた。当時オープンしたばかりの「サンリオピューロランド」にも一度きているはずだ。そして高尾山にも。


高尾山はそのふもと高尾山口にある「自動車祈祷殿」という交通安全の神様のところに正月に初詣がてら来て自動車をお祈りしてもらうやつをしていた。また正月以外にも実際に高尾山の頂上までの登山を何度もしている。田中の両親は夫婦共通の趣味として登山をやっており、田中も簡単な登山にはよく連れて行かれたのである。高尾山は途中までケーブルカーやリフトが走っており、気軽に登山ができる山だ。昨日の夜ネットで下調べをしていたら、高尾山は「年間登山者数世界一の山」であるらしい。


とここまでつらつら書いてきた情報(思い出)は、情報としてはそのように記憶されているのだが、実際の情景としての子供時代の記憶は田中の脳裏からほとんど失われている。テレビでタレントなどが、また何かの機会に誰かが、幼年時代の話をしているのを聞くと、よくそんな覚えてるなあと思う。しかし田中にだってある一瞬の映像だけはいくつか保存があり、「高尾山の頂上の少し手前」という感覚とともに記憶している「登山道の映像」が、田中の脳内にはたしかに保存されてあるのだ。写真を趣味にするその初回は、高尾山に行き脳内の映像と同じアングルで写真を撮る、ということに決めた。


同じアングルの写真を撮るということはしゃがんで子供の視線に合わせるということだろうなどと計画を立ててわくわくして登山をしていたのだが、結果から申せば田中が保存していた「高尾山」はどこか知らない全く別の山であることがわかった。


高尾山はもっともっと登山道で、その頂上はもっともっと狭苦しい感じだと記憶していたのだが、頂上には売店がいくつもありビジターセンターなる建物もある。広場のような頂上はまったく記憶の映像とちがうものだった。あれはどこだったんだろう。田中はもう思い当たる場所がなく、田中の父は死に、田中の母は耳が聞こえなくなり、情報はもう検索不可能となってしまった。


本日は乗らずに歩いたケーブルカーの上の駅までがとてつもなく急な石畳の坂。そのあと頂上までは神社の石段をひたすら登るような感じ。とにかく大半が人工的な舗装道。田中が本日使用したのは1号路といわれる道で実際には他のルートもある。帰りは6号路という比較的登山道風なルートを通ってもみたが、なにせ頂上の印象が記憶と完全にちがっているため、脳内の映像を写真で再現するという企画は完全に失敗となった。


登りの際には「頂上近くで念願の写真を撮り、帰りに写真の実験で入ってみよう」と考えていたサル園(高尾山にサル園なんていうものがあることも記憶から抜けていた、一度くらい入ったこともありそうなものだが)も素通りしてさっさと下山した。しかし本記事のここまでに掲載した写真は、カメラ機体の写真を除いて全てPENTAXQ10で本日撮影したものばかりだ。計画が消えたというだけで、撮影散歩自体はたいへんおもしろいものだった。


本日の撮影枚数はなんと523枚である。そりゃあフィルムでやったら無職のおじさんは破産してしまう。しかしデジカメならそれができるのだ。523枚は523のモティーフを撮ったものではない。まだ使い方がなにもわからないため、これをまわしたらどうなるのか、この数字を小さくすると画面が白くなるなあ、などと実験をしながら撮影した。


PENTAXQ10には「FlashAir」というSDカードをつっこんである。そうするとカメラで撮った写真がするするとスマホに移動し、スマホに移動した写真は自動的にgoogleフォトに保存されたのでこれは便利である。いずれ明らかな失敗作は削除することになるだろうが、googleフォトはそんな簡単に満杯にはならないだろうから、しばらくは放置しておきたい。


いまgoogleフォトさんは一生懸命働いて、どんどん通知を送ってきている。この写真はこういう色の具合のほうがきれいじゃないですかなどと勝手に補正をどんどんかけてくる。そうなったらもうどうでもいいよなあという感じはしなくもないが、しかしきれいな写真ができていくのはやっぱりたのしい。


高尾山にはカメラを首に提げたお仲間もたくさんいた。そのみなさんのカメラはやっぱり田中のQ10より大きいしレンズも長い。みなさんが写真を撮っているのをみていると、きっとあれをあんなふうに狙っているのだなあというのがわかる。その人が消えてから同じ場所に立って撮ってみた写真もあるが、どうも想像通りには撮れない。田中の腕がないということもあるし、カメラがちがうということもあるだろう。Q10がなんとなくわかった部分も出たような気はするが、やっぱり一度は基礎の理屈を文章で読んで勉強することに決めた。


4月から定期券で池袋に通うため、池袋→新宿→南平のルートの全駅で途中下車が可能となる。そこで職業訓練終わりの放課後、どこかの駅で降りて撮影をするという写真訓練を実施する予定だ。「多摩動物公園」の思い出はなにひとつ残っていないのだが、なにしろ家の近くであるため、6月ころ障害者手帳がもらえたら「多摩動物公園」の入園料はタダになるはずなので、障害者記念で「多摩動物公園」に動物の写真を撮りに行きたい。


そのためには、きょう写真を撮った感じではもっとズームが効かないと動物の撮影はできないだろう、とわかった。「02」では動物園は無理だ。なので次は「06」のレンズを買おうと思う。というように、写真関連の予定計画はどんどん進んでおり、こうして立派な趣味がひとつ出来上がったのである。うわさによれば、趣味でとった写真をうっぱらってマニをもらう趣味もあるらしいではないか。いずれそれにも挑戦してみたい。

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