雑文ブログの文章を書いて売文してると「同じことを何回も言わないでください」という注意を受けて文章を書き直すことがよくあります。私の文章はまどろっこしいようです。一度書いたことをすぐに忘れるからそういうことになる。私のアタマの問題なんでしょう。しかしここは自由に書いて良い場所ですので、何度でも同じことを言っていきます。
ということで、今日も前回と同じ話からはじめます。その話というのは橋本治という作家が亡くなったことです。私は熱心な橋本治の読者ではありませんでした。しかしだからこそ、橋本治が亡くなったというニュースを聞いた時にちょうど橋本治の本を読んでいたということは特別なことに感じられたのでした。今読んでいるのは『負けない力』という本、感想は読み終わった時にまた書くかもしれませんが、私は思い悩んだときに橋本治の本を手に取る傾向がどうもあるようです。
以前に私が読んだ橋本治の本はただの一冊だけなのですが、その時ちょうど大学生の私も思い悩んでいて、その本『「わからない」という方法』は、私の人生に決定的な影響を与えました。今調べてみるとこの本が発表されたのは2001年のこと、タイミング的におそらく私はこの本の発売時に新刊書店で出会っているようです。「集英社文庫」が創刊されたかリニューアルされたか、そんな時期の本だったと思います。
正確なところを覚えているわけではないのですが、この本の主張は私が理解し記憶しているところによれば、「わからない」ことは恥ではない、「わからない」から勉強するんだ、仮に全てがわかっていれば何もすることがなくなる、だから「わからない」とどんどん言いなさい、ということであったでしょう。
大学生として学問の海に溺れていた当時の私は、この本を読むまで「わからない」ことが苦しくて仕方なかった。そしてこの本を読んで救われたんです。
以来、社会に出てからも、 わかっていることを自慢する輩やわかったふりをする奴に出会うたびに、「わからない」と言えないなんてこいつらはなんてバカなんだろう(と橋本治が言ってるよ)と思ってきました。「わからない」ことの悔しさ、の裏返しだったかもしれませんが。
――先日、私が発達障害者のための就労移行支援の職業訓練を受ける予定で順番待ちをしている施設において、発達障害者を採用する企業の人事担当者の講演会があり、私も参加してきました。その講演の冒頭「あなたは仕事に何を求めますか?」という質問が私たち聴衆にむかって投げかけられ、一番前の列に座っていた私は講演者に指名されたのでした。この質問の答えを大声で叫ばねばならない状況となった私ですが、頭は真っ白でした。
大勢の前で発言しなければならないとそういう意味ではありません。仕事とは何だろうか、単純に金銭を得る手段ではないから前職も辞めたんだ、いまの私は次の仕事に何を求めているのか……と考え出したらもう何も思い浮かばなかったのです。そこで私は「わかりません!わからないから就労移行支援を受けようとしているんです!」と言いました。講演のマクラとして、私のこの発言は正解だったようで、私の気持ちは置いてきぼりで講演はスムーズに進んでいきました。
この時もまた私は、学生時代に読んだ橋本治を思い出していました。
次の仕事に何を求めたらいいんだろう――放送大学生である無職のおじさんは今学期、「多様なキャリアを考える」という科目を受講していましたが、この講義の中では、日本人は欧米に比べて
「働く目的」を「賃金」に置く割合が少なく、「生きがい」「個性の発揮」「社会奉仕」 「功績性」など賃金以外のために仕事をしている傾向がある、という話がありました。欧米では仕事で得たお金をプライベートに使って「人生」を構築するのに対して、日本人は「仕事こそが人生」というわけです。
私の人生は無駄ではなかったと思って4にたい、そう思って次の仕事を選ぼうとしている私は、とことん日本人であるのかもしれません。
一方で企業はどんな人材を求めているのか、「企業が採用したい人材像の変化」、教科書97ページも興味深い話でした。「積極性」「バイタリティ」「創造性」「実行力」「意欲」
などのキーワードがこの半世紀ほどずっと企業が重視する要素であり、また「柔軟性」「チャレンジ」「問題意識を持つ」などが近年上昇したキーワード、とのこと。最近それほど真剣ではないにせよ求人広告を眺める機会が多く、まさしくこうしたキーワードはよく見かけるものです。
ただここにはない言葉で、発達障害者に対する求人の中で頻繁に使われているキーワード、それはズバリ「素直」ではないでしょうか。
必ずと言ってもいいほど「素直」な人を求める、 資格を持っていなくてもよい、技能が劣っていてもよい、とにかく「素直」ならば、といったニュアンスで書かれた求人が、とても目に着くのです。これはどういう意味なんでしょうか――。
健常者は障害者に「素直」で純真無垢な天使でいてほしいってそーゆーことっすか?え?と毒づいてしまう私は全然「素直」じゃないわけで(笑)、おそらく発達障害者が「素直」でいることは大変難しいことなのではないか。だからこそ企業は本当に「素直」であることを求めている、ということなのだろうと思っています。
というのも私はこれまでの職業人生で、「もうちょっと素直になったらどうですか」という意味の注意を職場で、何度も何度も受けてきた経験があります。これまではそれを発達障害と結びつけたことはなかったのですが、最近求人を見て企業研究をする中で「素直」じゃない私はやはり発達障害者なのだなあと、暗い気分になることも多いです。
というのも私はこれまでの職業人生で、「もうちょっと素直になったらどうですか」という意味の注意を職場で、何度も何度も受けてきた経験があります。これまではそれを発達障害と結びつけたことはなかったのですが、最近求人を見て企業研究をする中で「素直」じゃない私はやはり発達障害者なのだなあと、暗い気分になることも多いです。
今度もまた橋本治さんが助けてくれるでしょうか――。
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