なぜ失業認定日を間違えるなんてことが起こったのか。失業保険はその申し込み日によって「型」というものが決定し、その「型」ごとの失業認定日が向こう一年間にわたって最初に決定してしまう。田中は「3型ー木」という人なので、もう失業認定日は会社をやめた昨年11月の時点で今年の11月まで全部決まってあるのだ。田中はその日付を全部スケジュール帳に書き込み、そのスケジュール帳は毎日見ているから、忘れるはずはないのである。
ところが、全国共通のこの「型」による失業認定日は、各ハローワークの都合で「繰上げ認定」という形での変更がかかることがあるのだった。今月、ハローワーク八王子は、平成の終わりから令和のはじめにかけての巨大ゴールデンウイークの前に忙しくなると嫌なので「繰上げ認定」を使っていたのである。先月の認定日、そのことの説明があったはずだ。それをスマホのスケジュール帳に反映した、つもりでいたのだった。
認定日をすっぽかした場合、たとえば親が死んだ、たとえば就職活動(面接)の場合、などそれが証明できる書類をもって後日ハローワークに行けば、問題なく失業保険が下りる。しかしそれ以外の場合、失業保険は下りない。それはそれは厳しい世界なのだ。田中も今月は1ヶ月お金をもらえないことになった。ありえないことだが仮に5月11日までずっと忘れていたとしたら、もう永遠に失業保険が下りないというところであった。
今月もらえない分はいつもらえるのか。と窓口で聞く。もう無理なのかと聞けば「来月以降に受給できる権利は持っています」。わかりにくい。そのまま放り出されたので、次に障害者窓口に行くからそこで詳しく聞いてみようとおもったら、障害者窓口の人間は「まあたいへん大丈夫でしたか」とすっとんきょうな質問をしてくるばかりで、何も知らない。もうええからさっさと相談のハンコ押してくれやいうて、もういちど給付課に戻って説明を詳しくしてもらった。ほんとうにあの障害者窓口は役にたたねえ。ハンコ押すだけなら俺にやらせろと田中は毎月思っている。
「来月以降にもらう権利を持っている」とはいったいどういうことなのか。失業保険を使う際のパスポートにあたるような書類、それは「雇用保険受給資格者証」であり、ここには失業保険に関して大事な数字が2つ書いてある。ひとつは「受給期間満了年月日」であり、これはどんな人でも退職した日の1年後の日付が書かれている。パスポートの有効期限にあたる。もうひとつは「所定給付日数」。これは勤続年数、年齢、田中のように障害があるかどうか(精神病で辞めたかどうか)などにより決定され、田中は300日だ。
毎月認定を受けると「残日数」が印字されていき、これが「0」になったとき失業保険の給付が終わる。今回認定を受けなかった田中は「残日数」が減らなかったということになり、簡単にいえば今回もらえなかった期間分が後ろに一ヶ月ずれた、というかたちになる。有効期限365日のパスポートだが、実際に権利を持つ日は300日である。このとき30日分の認定を受け忘れた。4月にもらえなかったぶんは、実際にはもらえないはずだった11月にずれたのである。よかったですね。
もう一度こういうことがあると、たぶん後ろにずれたとしてもパスポートの有効期限を越えてしまうので、完全に金をどぶに捨てることになる。今回の場合、幸い田中には1ヶ月を耐えるだけの貯金があり、後ろにずれても期限内だったので、なんとかなる次第である。またはやく就職が決まった際なども「再就職手当」の基準が甘くなるなどあるから、もし貯金がたくさんありそして給付日数が少ない方は、この方法を利用すれば最終的な収支がプラスになる可能性もあるのではないか?ないか?わからないので、みなさんそれぞれの場合にあてはめて考えてください。
田中は1ヶ月お金がもらえないというのは悲しいが、その分1ヶ月考える時間が増えたとも思っている。とはいえもらえると思っていたお金がもらえないというのは相当なショックで、きょうは就労移行訓練で習った手順でハローワークの求人検索をして一日過ごそうと思っていたが、あまりのショックで家に帰り一日中ずっと寝ていた。こんなに疲れがたまっていたのかというくらいに目覚めたいまは快調で、ショックにもよい側面はある。ショック療法という言葉もある。
ゴールデンウイークは旅行に行く予定で、もう切符をとってある。もし切符を取っていなかったらこのことでやめにしていた可能性もある。しかし切符を取ってあるしもともと究極の貧乏旅行としての四国遍路を計画していたところなので、予定通りに行ってみようと考えている。合羽を新調しようと思っていたがそれはやめにしてずぶぬれで歩く。太りすぎているので、お金がなくなってたくさん歩いてちょうど痩せるかもしれないからうれしい。
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