2019年4月14日日曜日

上野文化の杜の夜


先日、六本木の森美術館に葛飾北斎の浮世絵を見にいったのは現在受講中の放送大学に関連した内容だったことが大きいが、それ以上に純粋な感動というものがたしかにあり、田中はまた近日に芸術鑑賞に出かけようと決めていた。土曜日、就労移行訓練が半日あり内容的には充実していたものの教室の微妙な雰囲気の平日との違いが田中のこころを沈ませ、こういうときこそ美術館に出かけたら元気になるのではないかと田中は考えた。

学校の終わった放課後、田中は上野に出かけた。上野公園の中には多数の美術館博物館動物園があるが、これらの施設は金曜日土曜日に限って20時まで開館している。この仕組みが始まった当初ニュースで見てなるほどおもしろいと思ったきりその仕組み自体を忘れていたが、いったいどの期間どの施設までがこの制度をやっているのか田中は詳しく知らない。ともかく田中が気になっていた東京国立博物館の東寺展のサイトを見ると夜間開館のことが書いてあるので田中は出かけた。


東寺から仏像がたくさんやってくるのかと、その宣伝のビジュアルを見て田中は早合点していたが、「東寺―空海と仏教曼荼羅」という展覧会のため、曼荼羅が主体の展示になっていたことに田中はがっかりしたのが正直なところだ。立体像は最後の広い展示室にたくさんあることはあるが、クライマックスをそこまで引っ張りすぎていてその前の展示に波が無いように感じた。


そこに仏像が集まっているのは東寺の講堂を再現してあるのか、ともかく平面の曼荼羅と同じようにその並びに意味があるという展示。平安京の入り口「羅生門」の左右に作られた都を守る東寺と西寺、そのうち東寺を任されたのが唐で密教を学んで帰国した空海であった。田中にとって空海は、十五年も前から少しずつ進み今月も出かける予定の四国遍路の節々に、香川県出身の空海は、という形で登場する人として認識されていたが、彼が遣唐使に行ったことは知っていても、その後のことはよく知らなかったので勉強になった。


空海が唐で学んできたこと、それは密教の偉大な教えは深すぎて理解がなかなかできないが、それを図で説明するとみんなにわかりやすい、ということがその要点だった。それまで日本の神々は図案化されたことがなかった。仏教の仏が絵に描かれ立像とされるなかで、はじめて神社にも神様の絵や像がつくられることになった。現在田中は、就労移行支援訓練でパワーポイントを勉強している。パワポで聞き手に主張をわかりやすく伝える、この伝統芸能は空海が日本に伝えたのである。空海は日本ではじめてパワポを使った。


うち一像だけは写真撮影が許可されていて、みんな集まっていたので田中も帝釈天をうまく撮ろうとそこに長くいた。その写真をならべてみているがどうだろうか。写真を撮ろうとなるとどう撮ったらうまくなるか考えてモチーフをよく見ることになり、観察の勉強にもなる。また写真には撮れなかったが、御神輿を担ぐ人たちがかぶる面だったかあれはカラフルな立体でたのしい。きのう土曜日は仏像を見るつもりで出かけたから余計に立体がよく見えたのかもしれなかった。


しかしよく調べて行かなかったものの入館料が1600円するというのは高い。東寺展をみたついでに、国立西洋美術館の「ル・コルビュジエ展」もみたら楽しいという計画もあったのだが「東寺」が1600円なら「ル・コルビュジエ」も1600円するのだった。高い。高すぎる。こういう施設の料金は精神障害者の健康を助けるため障害者手帳の提示で割引が効くことが多い。田中は障害者手帳を現在申請中だが、一刻もはやく手帳を発行してほしいと言っているのは、無職の田中が次の就職活動に使うからだが、一方では手帳のメリットを生かしてこうした施設で遊び倒そうという計画があるからだ。

少し前の田中ならば、一度決めたことには歯止めが利かず、3200円も使ってしまってから後悔することが多かったが、昨日は素直に3200円は使いすぎだろと思うことができた。一方で、「ル・コルビュジエ」は我慢ができても、同じ美術館のなかの「林忠正」は我慢ができなかった。これを見逃したら一生見ることが無いかもしれないと思ったからだ。そもそも北斎を見にいったのは、北斎の浮世絵がヨーロッパに紹介されて「ジャポニスム」という日本ブームを起こした、という内容の授業を放送大学で受講しているからで、林忠正とはその「ジャポニスム」におけるキーパーソンの一人、いま田中がまさにレポートに書いているところの人なのだった。

運命であった。運命には1600円を払う価値があると思った。が、この日は「ル・コルビュジエ」を見るのには1600円かかるが、通常展だけを見るならば無料開放の日であるとわかった。田中はツイていた。林忠正は通常展の一室で展示されているという。教科書にも出てきたゴンクールの『北斎』(解説書)を実際に見ることができて感動した。放送大学の「日本美術史の近代とその外部」を受講しているみなさんはいま上野に行ったらいいと思う。このへんの詳しい話はまた勉強が進んでから、このブログでも報告する。


しかしきのう一番田中の目を喜ばせたのは、西洋近代美術館の常設展に時代順にならんだ西洋絵画たちだった。いわゆる油絵の歴史はまさしく近代という時代とともにあるもので、その近代という時代は思った以上に短い。キュビスムくらいにくるともうその視界は田中も生きている現代で、明らかに美術の教科書に載っていただろう画家の生没年を見ると田中が生まれてから亡くなっていたりしておどろく。上記の授業を勉強しているということもあるが、昨夜おもしろかったのはやはり印象派とその前後くらいだ。この常設展も写真NGの看板が出ている絵以外はフラッシュをたかなければ写真に撮ることができる。


そうして美術芸術鑑賞をした田中は、気分が晴れたかといえば・・・帰りに聖蹟桜ヶ丘でビールを飲んで帰り目覚めた今朝も気分は沈みなんだか頭がぼんやりして風邪をひいたのではないかと思っていたら眠くなって昼寝をして、そしてようやく元気になってきた。そしてブログを書いたのだが、それにしてもあの学校には行きたくない。はやく仕事を見つけて卒業しようと思った。ともかく障害者手帳をはやく出してほしい。

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