2019年7月6日土曜日

だから私はクルー


田中の就職活動が行き詰まりを見せて、ブログも進まないので、たまには聖蹟桜ヶ丘のおばさんのことを書きたい。これまできちんと書いてこなかったが、聖蹟桜ヶ丘のおばさんは今月で十三回忌を迎えたことになる。聖蹟桜ヶ丘の街はずれを流れる多摩川の河川敷で、夜中に散歩をしていたらしい聖蹟桜ヶ丘の叔母さんは、鉄パイプのようなもので背後から頭を殴られて、朝のジョガーがそれを発見するまでレンガ色の舗装のうえに倒れていたのである。殺人事件の時効は本国では廃止されており、今でも7月の命日には刑事から手紙が来るが、もう無理だろういまさら誰が捕まりに来るのか。

ところで聖蹟桜ヶ丘のおばさんはマクドナルドホールディングスではフィレオフィッシュしか食さなかった。決して肉より魚という人ではなかったが、トマトという野菜が嫌いで、また朝マックでも通常時間帯でもいつも同じものを食べたいからと、聖蹟桜ヶ丘のおばさんはフィレオフィッシュをいつも選んでいた。きょう駒場東大前のマクドナルドに入ったらまだ朝マックの時間で、フィレオフィッシュのセットと口にした瞬間、田中は聖蹟桜ヶ丘のおばさんのことを思い出したのであった。もうすぐ刑事から手紙のくる季節であると。高幡不動の駅前の商店街では七夕祭りをやっていた。

―労働とは何でしょうか。フィレオフィッシュがのったトレーに敷かれた紙にはこんなことが書いてありますよ。「働く時間もお休みも自由に決められる。やさしい仲間が支えてくれる。自分にあった仕事が見つかる。サポートも手厚く職場に馴染める。だから私は、クルー」。マクドナルドホールディングスではスマイルを販売しているというけれど、メニュウにスマイルが掲載されているのか、少し前に見たような気がするけれど、きょうは見つからなかったわ。いつもフィレオフィッシュしか頼まない私には、関係のないことかもしれないと思いました。あなたもクルーになったらいいじゃないの。どうですか―。

田中は今回に限らずこれまで何度も仕事がうまくいかなくなってきた人間だから、これがいつの失業時代のことかもうわからないのだが、田中のパソコンの中からついこの間、聖蹟桜ヶ丘のおばさんが田中に送ってきた、電子メールの文章が発掘されたので紹介した。いつもはアイスコーヒーを頼むのに、きょうに限ってオレンジジュースを飲みたくなったのは、聖蹟桜ヶ丘のおばさんが田中用にオレンジジュースを勝手に頼んでいたことを思い出したからに違いない。

0 件のコメント:

コメントを投稿

田中はにわのツイッターもよろしく