2019年6月16日日曜日

田中が行く池袋は


田中が4月1日から行っている「学校」、と呼んでいた場所は、正確には学校ではない。ではなになのかと言うと、よくわからない。発達障害者専門の就労移行支援事業所に通所している、というのが正式な言い方である。この就労移行支援事業というものは、支援する側がまずあり、支援することに対して役所からマネーをもらっているのだ。そのマネーがあるから支援される側は、無料で福祉サービスを受けている、ということになる。

が、その受けている福祉サービスとはいったいなになのか、最近よくわからなくなってきた。なにもしていない、とか言って、告発しようとしているのでない。たしかになんかやっているのである。それは仕事のままごとのようなもので、しかしよくできており、まさしく職業訓練と呼ぶにふさわしい。

田中はかつて自分が発達障害者だなんて思いもよらなかった失業期に、いわゆる職業訓練を受けて簿記検定2級を取得しているが、はてあれは職業訓練だったろうかと言えば、いま受けているものと比べた時、はなはだあやしい。あれは職業訓練という名前のモノであるに違いないが、実際の職業とはなにも関係していない。だから田中は簿記2級を取得してけっきょく、農業に従事することになったのである。

だから田中は、職業訓練という名の、社会にアジャストするための、福祉サービスを受けているのだな、と思っていたのだが、すると先日、その施設いわゆる学校からメールが来たのだ。東京都の指導により6月1日からみなさんには工賃を支払うことになりました。は?という話である。だって田中はなにひとつ働いていないし、ままごとをしているのだし、つまり何も生み出してはいないのである。ままごとで何かを作りそれをバザーで売ったりしているのではなく、ただよくできた偽物の会社に毎日通い、偽物の上司になんだかわからない文字の羅列された紙を持っていき、報告の練習をしたりしているだけなのだ。

それに対して工賃が出るという。工賃が出るとなれば、それは仕事なんじゃないか。とはいえ工賃は1日200yenだというから笑う。拘束5時間ままごと4時間である。時給50yenはアルバイトの最低賃金を大きく大きく下回っており、じゃあやはり仕事ではないのですね、ということになる。じゃあなんなんだよと。何のために工賃を支払うことにしたのだろう。不思議な話である。

一方でこの施設は、いわゆる転職支援人材業のように、田中に仕事を紹介し、企業から紹介料をもらうビジネスもやっている。そのおかげで田中は次の仕事が見つかるのかもしれないのだが、それにつけても田中は営業のエサなのである。そしてカウンセリングは、田中の心を癒す一方で、発達障害に関するデータどりに利用されていることも、田中にはわかっていることだ。いったいあそこは、田中が行く池袋は、なんなんだ。はやく抜け出したい、と思いながら、明日も田中は池袋に行くだろう。

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