発達障害者用の就労移行支援事業、その利用待ちの列に並んで1ヶ月ほどになるのでしょうか。まだ連絡はありませんが、はじまったら毎日そこに勉強に行くので、いまのように毎日遊んで暮らす日々は、そう長く続かないでしょう。新しい仕事が何になり、何処で働くのか、まだ何にも決まっていませんが、そのなかですでに決まっていることは、「事務職をする」、ということだけです。
就労移行支援を通じて、数百種類の「事務職」体験の中から、私の狂った脳のなかでも仕組みがよくできているらしい箇所をさがし、その部分のみを切り出してできる、逆に言えばそれ以外のことはなにも気にしなくてもよい、そんな仕事にたどり着く計画です。仕事に関するイメージはまだぼんやりとしかなく、こないだ体験日にやった、システムダウン緊急時の勤怠管理表データの手入力、というワークは、ただひたすらにキーを打つたのしい仕事でしたが、「事務職」にはこの他にも多種多様な「事務職」があるのだと言います。実際にこの施設に通い始めたら、午前中は自分の脳に関する研究、午後はさまざまな種類の模擬仕事をしながら、次の正式な仕事を探していくことになります。
そんな「事務職」をするようになったら、施設に通う服装はカジュアルでよく、また実際の職場にも服装自由な場所というのがある程度には存在するらしいのですが、かなりの確率で「スーツ」を毎日着るようになるのではないかと、さいきんスーツという服に興味が出てきて、紳士服のなんとかに行ったり、スーツなんとかに行ったりしてみています。また街でもスーツを着た会社員のファッションチェックを勝手におこなって、自分が着るときにたのしくなるように計画をしています。
先日、帝京大学の図書館に行って借りてきた、アン・ホランダー『性とスーツ』は、ジャケットにスラックス、ワイシャツにネクタイという服装がどういうふうにできてきたのか、という歴史の本です。それによりますれば、現代の男性ビジネススタイル、それは20世紀初頭の四半世紀のモード、すなわち「モダニズム(近代主義)」に決定されたものです。直線による身体のデザイン(縫い目の明示と実際の体型の隠蔽)、また材料の質感重視で布の色彩は排除する、というスーツスタイルのデザインは、建築の世界におけるコンクリート打ちっぱなし・むき出しの鉄筋・ガラスの強調、また写真の世界における白黒表現の流行と同調したものであります。
他分野表現との横並びでスーツという表現を見ると、以上のようになりますが、前時代の服装との比較で見ると、より端的に、スーツは「隠すことがエロい」服である、ということができます。スーツ以前の表現において、たとえばお腹のふくらみ(太っている)ことが強調されて裕福さを象徴するようなデザインがとられていたものが、スーツの時代では体型を画一化する方向に動いています。またもっともアケスケなことを言ってしまえば、スーツ以前の男性服においては、股間の「もっこり」が強調されるデザインが常にとられてきたのに対して、スーツのジャケットは股間を絶妙に隠す丈をもち、そして長く立派な性器の象徴的表現としての「ネクタイ」が誕生しているというのです(ほんまでっか?)。
先日、ツイッターでも書いたことですが、有名Youtuberの「はじめしゃちょー」がこの正月、「2019年一年間は動画内で常にスーツを着用する」という宣言をし、彼の一味である「はじめしゃちょーの畑」のメンバーにも全員、スーツ着用を強要する日々が続いています。ここまで書いてきたように、このところスーツのことを考えていたところだったので、この話題についてもずっと考えていました。
「はじめしゃちょー」は2017年、三股だか四股だかの浮気騒動というのが、テレビのワイドショーでも取り上げられるほど話題となりましたが、その際にはスーツを着て謝罪動画なるものをアップしました。今年年頭の「スーツ宣言」において、この話題は直接的ではないものの、しかし明らかに当てに行くように、本人から語られています。「youtuberがスーツを着て動画に出るのは謝罪するときだけという常識を壊したい」というふうに。
が、そんなふうに浮気をごまかすことが目的とは思えない(なにをいまさら)わけで、では彼(ら)がスーツを着ることによって、どんな効果が生まれるのだろう、ということを考えたとき、このただふざけているだけの動画も仕事です、とか、しゃちょーらしくスーツなのかな、とかいろいろ考えるなかで、おそらくはじめしゃちょーは「スーツこそエロい」という服飾史上の事実に気づいて目をつけたのではないか、と私は考えるに至りました。
私が「はじめしゃちょー」の動画をそれほど見ない理由は、彼が常に女子の視線ばかりを意識しているように見えるからで、なにかにつけて彼は女子にもてようもてようとしています。もてようというか、「はじめしゃちょー」ほど自身の裸をネタにしてきたyoutuberはいない、でしょう。「はじめしゃちょーの質問コーナー」動画の過去を振り返れば、そのたいていにおいて彼は全裸になっており、また「はじめしゃちょーの畑」の第一回も、そこに出演するメンバーが全員全裸、というコンセプトからはじまっていました。
しかし近日、多数の男性youtuberがそれぞれの動画で声をあげたように、このところyoutubeにおける「規制」が厳しさを増す一方であり、このたび男性の乳首が映った動画を放映することが禁止になったというのです。それはいったいどういうことなのか、と思わなくもないですが、ともかくそのように奥の手を禁じられたはじめしゃちょーであるからこそ、次なる視覚的エロスによる女性視聴者獲得のため、選んだ扮装が「スーツ」であったのだ、というのが私の読みであるわけです。
そのような視線で「はじめしゃちょーの畑」を観察したらなにかおもしろいことが起こるかもしれないと、あるいは服装史社会史の変革の瞬間があらわれるのではと、スーツのファッションチェックという趣味と実益をかねて、「はじめしゃちょーの畑」を近日チェックしていたのですが、彼らは上着を着ることが少なく、またワイシャツの裾をアウトしており、そのくせネクタイだけは締めて男性器を強調するという、放課後の高校生のようなスタイルで毎日生活しており、そこに萌える女子もいるのかも、と思いつつ、私にはまったく感心するところがなくて、再びチャンネル登録を終了したのでした。
発達障害という脳の異常な個性に、これまでの人生を苦しめられてきた私は、この先「スーツ」を着て「事務職」をすることで、その個性を「隠蔽」し、モダンな社会人として残りの人生をやり過ごしたいと、そう考えている、のですが、実のところ本当に私が好きな服は、子供服のような原色であったりして。きょうも八王子のドンキホーテまで行き、強力ブリーチ剤で髪を金髪にした後、すぐに銀色に染め直しをしました。Youtuberが動画でよく使う、本当に原色に染まるドンキホーテのカラー剤を用いて、中年の精神障害者の人は精神障害で髪の毛の色が落ちてしまったかのようなきれいな銀髪になり、たいへん満足をしております。
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