2019年9月2日月曜日

障害を構造的に職場に開示する


今週から仕事がはじまる。田中は発達障害者として、健常者の職場にまじる。職場は発達障害に理解のある職場であり、これまでにも障害者雇用の実績がある企業だ。そこに入社するにあたって、障害特性を一覧のリストにして、配属先の全メンバーにプリントで配布することになっており、近日はそのリストを作成していた。

職場に障害を開示する、そのタイミングと範囲はケースによってさまざまだろう。そのさまざまにより、開示の影響がよくもわるくも作用する。今回の田中の場合は、職場のほうに経験が有るため、田中はそれに従うことにした。田中は障害者として働くのがはじめてだからだ。一方的に、この方法を押し付けられたわけでもない。田中としても、障害者であることはなるべく広く開示して、ありうるトラブルを事前に避けることが、障害者雇用のメリットと考えているからだ。

しかし、このリストを作るのには、けっこう苦労した。インターネット上に発達障害者の「自分のトリセツ」的な、障害を開示するペーパーの見本はたくさんあるが、こどもようというか、障害が田中よりずっと重い人用というか、しっくりくるものはなかなかみつからなかった。また、どこまで開示するべきなのか、も問題となる。仕事に関係している部分はどこまでなのか、ということだ。

その線引きには、先日まで通っていた就労移行支援の施設と、また採用されるにいたるまでなんども行われた面接と、そこで扱われたり、質問されたりしたこと、が役に立った。たとえば田中は、常になにかに対して強烈な怒りの感情を持っており、だとか、死にたいと思うこともあり、だとか、そういう事実は心理検査からも客観的に明らかなのだが、職場に対してそんなことを言っても意味がない。対処は自分でおこなうものであり、会社に配慮を求めることが思いつかないからだ。

そう、リストは、就活の面接と同じく、①障害特性⇒対策⇒配慮の3段階でまとめるのが適当だろう。ただし障害特性は、必ずしも悪い面だけをまとめる必要もなく、障害であるがゆえに得意とする分野も並べたらいいと思う。それでもどこまでの範囲を書いたらよいかということになり、田中は②作業上、対人面、思考行動という3側面を考えた。①の横軸と②の縦軸で、3×3の表ができ、これを田中は会社に提出することにした。

これで準備は整い、あとは入社日を待つばかり、いや入社前日には例によってハローワークに行く必要があるのだが、他の書類の準備もありますが、なんとかここまでこぎつけたわけである。いまはもう、はやく仕事がしたいという気持ちしかない。

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